99人が本棚に入れています
本棚に追加
「獣鬼どもは今、『海を渡ってきています』。おそらく『外国』から」
「なに?」
「待て、それはつまり……」
「考え得る最悪の結末は日本の『周辺諸国が壊滅した』ということです」
一同が絶句した。それは萱野も例外ではない。
「そんな……我々は一体どれだけの獣鬼と戦わなければならないんだ……」
兵科管理部長のその呟きに答えられる者はいなかった。調査部長は話を続ける。
「もし、韓国やロシア、フィリピンが未だ健在であったとしても、各国で増殖した獣鬼たちの一部が日本へ向かってきているのは事実です。そして昼間、各拠点の調査課員たちに海へ潜らせたところ、日本海側と太平洋側から数十万規模の獣鬼たちが迫ってきていることが判明しました。奴らは夜になるとその腕力を活かし、海を掻き分けて徐々に日本へ近づいてきています」
「なん、だと……」
あまりにも絶望的だった。このままでは遠からず日本は壊滅する。
「い、一体どうすれば……」
「そ、そうだ! 西日本側と協力すれば!」
「いやいや、西側とて虫の息でしょうに。それに京都、大阪を境に二分されている以上、戦力の融通などできますまい」
「では彼らに西側を捨て、東側へ来るように命じては?」
「この状況下では無理だ。東側に受け入れる体制が整っていない上に、そんな大人数の移動、近畿で獣鬼の襲撃を受けて全滅だ。敵を増やしてどうする」
上層部が取り乱している中、萱野が立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!