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「それを打開できるのが最後の鬼人です。その者からオニノトキシンに関する全ての情報を得て、打開策を練る。それだけが今我々に残された唯一の可能性ではないでしょうか!? なにもできないままジリジリ追いつめられるぐらいであれば、一パーセント未満の可能性であろうと、賭けてみるべきです!」
萱野がここぞとばかりにまくし立てる。周囲の者たちは皆、自分よりも立場が下の者に気圧されていた。
本部長が厳かに問う。
「そこまで言うからには、それを成功させる算段はついているのだろうな?」
「もちろんです」
答えた萱野の頬はかすかに緩んでいた。その問いを待っていたかのようだ。
「本来、教団を殲滅させるために備えていたものを使います。まず、教団襲撃に間に合わなかった他拠点の援軍。次に試験運用グループの飛鳥への統合。そして、新型鬼穿に対抗すべく開発を進め、昨日完成した鬼穿『阿修羅-改』及び回転式機関銃『大蛇砲』の実戦投入です」
「なるほど、既に準備は万全だと。これは一杯食わされたな」
本部長がスキンヘッドの頭部をさすり、二ヤリと薄い笑みを浮かべる。もう、反論しようとする者はいなかった。
「これも全て、成田G長のご意志です。私は引き継いだにすぎません」
元々、海から獣鬼が迫ってこようとなかろうと、彼は東京を探索するつもりだった。だから、教団が壊滅してもそれまでの下準備を継続させた。この状況はむしろ、その作戦に大義名分が加わる分、好機でしかない。
「ふははははは! 成田を飛鳥のG長に引き上げ、萱野をその下につけた私の判断は大正解だったというわけか。実に痛快!」
十五年前の鬼人衆討伐戦の際、当時の飛鳥G長を務めていた現本部長は、大声でひとしきり笑うと、瞠目していた者たちへ萱野の案を採用する旨を告げるのだった。
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