私も傍観者だった

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私も傍観者だった

クラスの中で、一人の男子が「◯◯菌」と呼ばれていた。近くを通るだけで「不潔だ」と避けられ、対象者に触れたものに「菌」が移ると誰かが言った。私はそんなもの気にしなかった。だいいち、「◯◯菌」と呼んで特定の一人に意地悪するのが嫌だった。柔軟性のない正義感が後に自分を苦しめるということを知る由もなく、私は教室で勝手に神経をすり減らしていた。「誰かが意地悪されている」という事実が、飛び交う悪口が、自分に降りかかってくるように思えて嫌だった。自分のことしか考えられない私は、対象者を助けることもせず、やめさせようともせず、ただの傍観者となっていた。
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