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「どうしてココに来たの?」
真面に始めちゃった会話。
「人間、月ほしい。我ら同じ、ほしい。一緒暮らせるか、確認しにきた」
そういえば最近、地球から月にみんなで移動して、色々開拓しよう、なんて世間話が廻っていた気がする。
「月が欲しいのか、地球が欲しいのか」
「……ニンゲン、無理だった。おかしい、皆。月欲しい、争い起きる。その前に、地球ごと奪う、命令」
上層部の宇宙人さん、物騒だなぁ。
「そっか。じゃあもうちょっとで消えちゃうね、ボクも」
「いいのか?きえるぞ」
口角を上げたまま、ボクはパイプを細い指でなぞった。ひんやりと非情な、スッキリとした感覚が伝わってくる。
「どーでもいいのさ。興味ないからね。――というより、人間そんなにおかしかった?」
「我々にはわからない。裏と表があるのも、感情と逆の行動するのも。ずっと寂しくて、比較しか、できないのも」
面倒くさそうな意見ばかりだ。
あとこのロボット、喋り口調が安定してきているような。
「でもそれってこの国だけじゃない?」
「他は仲間が調査行った。全部行って、この決断した」
海外旅行もしたことがないし、この国に縛られているボクには理解できない。
ただ、それだけのことだ。
「オマエは、変だ。我々の意見が覆されるくらい、他と違う」
固唾を飲み込んで、その言葉も飲み込む。
ボクは慣れたように、嫌味に鼻で笑ってやってから、座ることをやめて両足を地面に着かせた。
首を傾げて見守るこの子に、己に足があることを見せつけるように、ちょっと跳ねてみせる。
「一人がいい、逸れていたい。男だけど髪が長い。批判的な言動ばっかり。ボクみたいな人はね、案外いっぱいいるのさ」
自分の好きな自分で叫んでも、不適合者として見られるだけで。
「飽きたんだよ、そういうの」
新しい自分を描いて、本心を押し殺す。やがて嫌悪感が成長すれば、それは嫌いとして失われる、一つの快楽へと姿を変える。
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