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――ちょっとキツく言っちゃったかな。
この子は黙り込む。細く黒い腕を、達者に巻かれたマフラーに引っ掛けながら。
けれど長くは続かなかった。ボクのことを見上げ、恐れもせずに話す。
「……ここきて、常識、という言葉を知った。でも結局は、周囲と同じでないと落ち着かない、多数派の作った言葉だろう。正義、というのも、己が正しいと思いこまねば、何も出来ない故の行為だろう」
この子の言葉の羅列に、ある種の興奮を覚える。
どうしようもないくらい、これは。
「…………あははっ!!ああ、なかなか面白いことを言うね。そうさ、アレらは所詮、妥協の塊さ」
面白い。自然と笑顔になれるなぁ。
やっとこの子と共感ができて、あまり知らない嬉しさが胸を満たした。
「あー、キミ普通に日本語喋れるじゃん」
演技だったらなかなかのやり手だな。
「今、オマエに興味が湧いた。人間としてではなく、オマエに」
「そう、それはよかった。」
ボクは興味ないけど、まったく。その言葉を喉で抑え、展開してみる。
ボクが面白いのはキミじゃなくて、キミの並べている言葉だ。
「人間は寂しがりやだ。オマエは怖いんだろう、他者と共にいることが。恐怖したから、叶わないから、選んだ、一人」
「なかなか痛いとこつくね。でも嫌いじゃないよ」
嫌いじゃない、という言葉に揺らいだのだろうか、この子は急に空を見上げる。
ボソッと、そろそろ時間だなんて呟いて、ボクのように立ち上がった。
「礼を言う。オマエのお陰で、考えが変わった。いろいろ」
――会話は終わりみたいだな。
何時、どうやって地球は滅びるのだろう。否、我々が宇宙人の星を滅ぼすのだろうか。
こんな世界、いらないけど。
それとも、和解、なんて。
「ねぇ。ボク、これからどうなっちゃうのかなあ」
「……どっちにしろ、苦痛だろうな」
キミはそう言って、瓦礫の山へと歩み出した。
ボロボロの腕を、振りながら。
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