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Happy Birthday
「今日も平和な一日でありますように……」
いったい何度、同じ願いを唱え続けただろうか。
ドライフラワーの花束を胸に抱え、もう一度目を閉じたとき、部屋の扉がバタンっと開いた。
「萌花姉、起きてるー?……あぁ、またやってる。何なのその儀式」
躊躇なく私の前を横切った妹の菜乃葉は、勢いよくカーテンを開けると
「24歳。夢見る歳じゃないよ!……お誕生日おめでとう」
と微笑んだ。
「誕生日の姉に贈る第一声がそれ?」
「現実を教えてあげるのも家族の優しさでしょ?」
「17歳はもっとピュアでいなさいよ」
こつんとおでこをつつくと、菜乃葉はごしごしとその部分をなで
「そういう感情は萌花姉が全部ママのおなかから吸い上げていった」
と頬を膨らました。
「えぇ。私のせい?まぁ、そのかわりきれいな顔は置いておいてあげたでしょ?」
困った顔をしても歪むことなく整った菜乃葉の頬を
「冗談だよ」
と撫で、部屋を出た。
トコトコと後ろに続く菜乃葉の姿を見ていると、ごく普通の朝の光景も愛おしく思える。
菜乃葉は私の誕生日を祝ってくれる、たった一人の家族だ。
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