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ごはんとみそ汁に、昨日の夕飯で残ったささやかなおかず。
これだけあれば十分だと思わせてくれるのは、心が満たされているからか、菜乃葉が作る料理が特別おいしいからかは分からない。
「さっきの花、なんて名前だっけ?」
と菜乃葉が首を傾げた。
「エバーラスティング。もう何度も教えてるよー。興味ないんでしょ」
「あーそれそれ。花の名前って難しいんだもん。毎朝ドライフラワーを抱えて祈りを捧げてるのなんて、世界中探しても萌花姉くらいじゃない?」
「それは偏見」
少しムッとした表情を見抜いた菜乃葉はすぐに話を変えた。
「萌花姉、今日は早く帰ってくるよね?ケーキ買ってくるね」
「いいよ。そんなお金使わなくて」
「こういう時のために節約してるのに、今使わなくていつ使うのよ」
ごはんを口いっぱいに詰めた菜乃葉を見ていたら、思わず声が漏れた。
「ごめんね」
「えっ?何が?」
「私がこんなだから、そんなにしっかり者にさせちゃって」
「何言ってるの?そういうの嫌だ―。……ちゃんとここまで育ててくれたじゃない」
ぽつりとつぶやく菜乃葉の瞳に、いつかの母の瞳を重ねた。
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