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「すみません、母の日のカーネーションの注文できますか?」
おずおずと花屋に入る。男ってだけで、なんとなく花屋は敷居が高い。
毎年同じ花屋に行けば、こんな質問はされないんだろうけど……
『黄色のカーネーションですか?!』
花屋の店員さんらしいって言ったら偏見なのかな。キレイ目で花が似合いそうなスレンダーな店員さん。そういった反応にはもう、慣れたものだ。
「はい。母の日に、この住所へ送っていただきたいのですが」
『母の日の贈り物でしたら、お色を混ぜてカラフルなカーネーションの花束になさるか、他のお色を選ばれた方が……』
「いいんです。花言葉でしょ?知っていますから」
店員さんはそれ以上なにも言わなかった。
注文を済ませて店を出る。
「ありがとうございましたー」
変なやつだって思われたかな。まぁ気にしない。来年はまた別の花屋を探せばいいだけ。
僕は走るのが苦手だったから、徒競走で2番になったらもっと誉めてほしかった。
僕は部活がやってみたかったから、習い事は通いたくなかった。
僕は友達と学校帰りに買い食いしたり、カラオケにいったりしてみたかった。
僕は示されたから医学部に進んだと思った?
僕は望まれたから医者になったと思った?
今年も母さんに、それはそれは立派な 黄色いカーネーションを贈ったよ。
母さんはそれを受け取って、大いに喜ぶんだろう?
母さんは、近所に息子がくれたと自慢するんだろ?
僕はこれからも、母さんが死んで墓にはいったって 毎年必ず、黄色いカーネーションを贈るよ。
花言葉は「軽蔑」
僕はずっと、母さんに贈るからね。
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