道化師は語る

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新人の使用人が、廊下の向こうから歩く男性を見つけた。仮面を付けていて、顔はあまりよく見えない。側には剣を腰に差している女性もいる。用心棒だろう。語り部と用心棒は二人で一人。セットでいることが基本らしい。 「あれが、語り部の道化師……」 道化師と用心棒が王子のいる謁見の間へ入る。王子は嬉しそうだ。 「やっと戻ってきたか。今回の旅は長かったな」 「二月ほどの旅でした」 「そうかそうか。で、さっそくだが旅の土産話を聞かせてもらおうか。お得意のフィクションでも構わないぞ」 「はい。何から話しましょうか……」 道化師は思案し、やがて口を開いた。 「そう、あの日は大空が澄んでいて、とてもきれいでした」
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