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出会いは唐突だった。
午前8時、佐竹美花の教室には、いつもの気怠さとは打って変わって、ざわざわとした活気があった。
「今日、転校生が来るらしいよ。」
「まじかよ、どんな人か見た奴いねーの。」
「あんた、どーせ可愛い子だったか知りたいんでしょ。ほんと面食いよね。」
桜が葉桜へと変わる頃、美花のクラスには、転校生がやって来るらしい。好奇心豊かなクラスメイト達は、
ここ一週間、ずっと転校生の話をしている。
「すごく美人な子らしい」「頭が良くて、運動も出来るので、前の学校では、モテモテだったらしい」
似たりよったりの噂を集めては、クラスメイト達は、どんな人かと会ったことのない転校生へと好奇の目を向けていた。馬鹿馬鹿しい、美花は思っていた。転校生なんて、毎年来ているじゃないか。その度に、みんなくだらない噂を信じて、期待どうりじゃないと、がっかりしての繰り返し。いつも期待通りの子なんて来たことないじゃないか。どうせ今回も普通の子でしょ。そう思うと、このただただ賑やかさという名の五月蝿さで満たされた学校が、嫌になってきた。
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