白いアサガオ

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「佐竹さんも、その小説好きなの。」  がやがやとした喧騒の溢れる昼休み、美花の耳にひとつの声が優しく響く。驚いて、前を見ると、奈緒がにっこりと美花に笑いかけている。すうっと美花の身体に温かいものが広がる。 「う、うん。好きだよ。赤木さんも好きなの。」  初恋に近いような感情を抱いてしまった人間に声をかけられ、緊張したのか声が震える。声、変だと思われてないよね。変な子だと思われてないよね。手に汗がじんわりと滲む。ふふっと花の咲くような笑い声がした。奈緒の声だ。やっぱり変なやつ扱いされちゃったか。どうしようもない後悔で美花の顔が紅色に染まる。 「うん。私もこの話、だーいすき。いつもキュンキュンしながら読んでるよ。」 奈緒が美花の本の表紙をを撫でる。よかった、嫌われていなかった。幸せそうに本の表紙を撫でた奈緒の表情につられて、美花は自分の頬も緩んでいくのを感じた。
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