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「……史さん……」
湯上がりの火照った史を抱きしめて、柾はそのまましばらく動かなかった。石鹸の匂いに混じる、史の独特の甘い体臭。普段ほとんど感じ取れない香りが、今は花咲くように柾に向かって匂い立つ。
恋人として初めて肌を合わせることに、柾はひどく緊張していた。
偶然が重なって、先に身体の関係を持った史が、柾だけのものになって今、目の前にいる。ただ思いのままに突っ走った時とは違う、心臓の高鳴り。
唇を合わせて舌を滑り込ませると、素直に史の舌が応える。絡み合う唾液の音に柾の心臓がさらに拍動する。
柾は緊張を隠すように史の背中に手を回し、バスタオルの上から腰を抱いた。ひきしまったカーブをなぞると、史の身体が小さく揺れた。
もつれるようにベッドに倒れ込み、柾は長袖のTシャツとニットのカーディガンをひとまとめに脱いだ。
唇を合わせながら、史のバスタオルを剥がす。胸から腹に手を滑らせると、史が吐息を漏らした。
「……ふ……ぁ…」
眉根を寄せた表情は、嫌がっているわけではない。そうわかっていても、柾は慎重になった。首筋に口づけると、史の唇が薄く開く。
そのまま鎖骨までキスを落としながら、手は腹からさらに下へと降りていく。
あえて避けたルートで、太腿の内側に触れて、柾は史の顔を盗み見た。
史は半分閉じかけた瞼で天井を見上げていた。
甘い香りを放って、熱い息を吐く。柾は背中にぞくぞくするものを感じた。
柾は史の内腿の肉をぐっと掴んだ。史が顔を歪めた。
「…っ痛ぃ…」
史の両腿を左右に開き、柾はそこに顔を埋めた。
「…んぁっ……んっ…」
柾の下の先が触れた瞬間、史の両脚は電流が走ったかのように震えた。
腰を反らせ、シーツを握りしめて、史は途切れ途切れに喘ぐ。唾液を絡ませて、史のそこをねぶるうちに、柾自身も耐えられないほど昴ぶっていく。
「はぁっ……まさき…っ…」
膝を痙攣させながら、柾の頭を持って、史が呼んだ。その声をうっとりと聞きながら、柾はさらに深く咥えこみ、吸い込んだ。
「あっ……あ…」
柾の顔を押しのけようとする手に力が入る。史が懇願した。
「あ…っやめ…っ…」
柾は一度口を離して、息をあらげる史を見つめながら後孔に手を伸ばした。溢れ出た史の愛液でぬめる指先は、すんなりと進入した。
温かい肉壁が柾の指にまとわりつく。柾は史の表情の変化を見逃さないように、指を進める。
極力声を抑えていた史が、無意識に高い声を上げた。
「…っあぁっ……」
抗えない、といった様子で史は全身をびくつかせた。
「史さん…?」
柾が顔をのぞき込むと、史は両手で顔を覆って快感の波に飲み込まれないように耐えていた。
柾は低い声で囁いた。
「ここ……いいですか…史さん」
同時に指を軽く曲げて、快感の波を呼び起こしてやると、史が悲鳴に近い声を上げて身をよじる。
「……っだ…めっ……っんっあ…」
「イって、いいですよ」
「やっ……うぁっ…んああぁっ」
史が一番大きく身体を揺らした。胸を上下させて息を吐き出している。
柾を見る目がとろけそうに甘い。熱い視線に溶かされて、柾は史の両足を捕らえた。
柾の熱いものが史の中に少しずつ挿入っていく。
「ひあぁ…っんう…っ…」
「史さん…好きですっ…」
「まさ…き…っ」
「史さんっ…」
「…あっ…んっ…まさき…っ…」
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