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景山松子が質屋の従業員になったのは簡単な事だった。
小、中、高と成績も中ほどでそれなりの大学に入った。
両親は理系信者だった。
大学には理系学部しかダメだと念を押されて
仕方なく理学部に入った、専攻は化学。
松子は文系、ファッションやデザインを希望していたが
この時ばかりは親の強烈な勧めに圧倒された。
なんで・・?
松子は納得できなかったが勘当も辞さない親の剣幕に負けた。
嫌いな学科でも毎日やっていれば知識は付く。
一般的に再就職する時仕事を選択するのは以前と同じ職業が多い、
ホテルマンはホテル関係、ドライバーは他の運転手、
土木建設者は同じ畑の仕事を選ぶ。
最初は嫌でも知識と経験と自信がついているからだろう、
全く別の職業を選ぶのは不安なのかもしれない。
松子も卒業時には化学を専攻した自信が付いていた。
教授は松子にB社に就職するよう薦めた。
B社は世界三大化学財閥、西ドイツの本社を起点として
世界各国に支社を持つ巨大企業だった。
おっとり物静かな松子は仕事なんか生活が出来る程度でいいと
思っていた、落ちる気持ちで冷やかしのつもりで
受けてみたらすんなり受かってしまった。
喜びよりも戸惑う松子だった。
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