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「吟子さんお願いしますね、しっかり教えてやってください」
小太りの店長が大杉吟子にいった。
「任せといて、一人前にするから」
初老の大杉吟子、スーパー最古参の万引きジーメンだった。
新入社員の山田を教育すべく客に成りすまして観察していた。
「あーダメだね、客をジロジロ見回して・・女子を見すぎだ、
それらしい客を見付けたけど・・あー玉子の陰に隠れて
しゃがんじゃったよ、他の客が気味悪がってる」
山田が不審者と思われてしまう。
吟子が店に入った。万引き犯独特の仕草や行動を見せるためだ。
地味な服装にエプロン、口が大きい袋に買い物かごを下げて
山田の前を行き来する。お菓子の袋を手に取って辺りをきょろきょろ
見回した。山田と目が合った。
よし、と吟子が背中を向けお菓子を袋に入れるふりをした。
これで分かったかな?と思いながら振り返って山田を見ると、
山田は通り過ぎる女高生の尻を凝視していた。
「ありゃーダメかな?」
と思う吟子だった。
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