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数か月過ぎ山田も少しずつ仕事に慣れて来た。
万引き犯を捕まえるのは社会の秩序に役立つと気合を入れていたが、
生活に困った老婆を確保した時は胸が痛んだ。
「お金が無くて・・電気も水道も止められるから・・」
社会的弱者がどれほど多いことか、
山田の気分は重くなった。
吟子は山田の何倍も精力的に仕事している、時折
店の表の駐車場や客をじっと見つめていた。
吟子の父親は地元の資産家であり会社の社長だった。
放蕩な生活を続け愛人に子供が出来た。
愛人は多額の慰謝料を要求し金を手に入れると雲隠れ
してしまったらしい。
愛人は生まれたばかりの吟子を父親に押し付けて消えた。
父親は金持ちで豪邸に住んでいたが愛人の子である吟子には
苛酷を極めた。
中学を卒業期に一人で働いて生活すると頼んだ時は
待ってましたとばかりに街はずれの小さなアパートを
当てがわれた。それでも吟子はあの家から出られたことが
嬉しかった。
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