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昼は飲食店で働き夜間高校に通った。
夜間高校は勤勉で真面目な生徒も多いがいい加減な奴等も
多かった。バイクや車、集団で遊ぶことを好む生徒はいつしか
仕事を辞め学校から消えて行った。
その男は学校に通う女子を軽く見ていた。
誘えばすぐに乗って来る、働いているので金の心配もない、
男は吟子に言い寄って無理やり付き合い始めた。
生まれて初めて男に優しくされた吟子は男の口車に乗ってしまった。
高校二年の時、吟子は妊娠、出産した。
その頃は男は消えていた。
悲観に暮れた吟子だったが一人で子供を育てる決心をした。
休みも寝る時間も惜しんで働き続けた吟子、時間が通り過ぎる
のも忘れていた。
娘が高校卒業して小さな工場で働くようになった時は嬉しかった。
娘が妊娠したことを知った時娘は吟子に詫びた。
吟子は首を振って「ううん」と笑顔で応えた。
自分と同じ過ちを咎める事は出来なかった。
娘は難産だった、かなりの時間を掛けて赤ん坊が生まれた。
その後容態が急変した娘、苦しみながら、
「この子かわいいでしょ、面倒見てやってね」
と言いながら逝った。
言葉も涙も出なかった。
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