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いくら生活が苦しくても倒れて動けなくなっても実家には行かなかった。
強欲な親族から虫けらのように排除されるのが嫌だった。
「また振り出しに戻った」
孫娘、真理を抱いて働き始めた。そして、
真理が家出をしたのは真理が高校3年の夏だった。
世間の親に比べて全く孫娘を守ってやれなかった自分を悔いた。
仕事も無くなり家財道具や衣服を質に入れた。
大松屋の主、八重子は吟子の話を聞いて力になった。
八重子からスーパーの仕事を紹介してもらった。
「焦らないで、じっくりと両手を広げて待ってたら真理ちゃん
きっと帰って来るから」
吟子は八重子の言葉を信じた。
真理は本当は優しく思いやりのある娘だった。
たまに真理から手紙が来た、吟子を心配しているのだ。
しかし連絡先は不明だった。
たまにスーパーの前で大勢の客が歩いているのを吟子は
ぼんやり眺めていた。
親子連れの楽しそうな笑顔、目を泳がしながら
真理の姿を探していた。
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