担当さん私の作品愛してますか?~ドS編集者とJK作家の溺愛恋愛事情~

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通学路にある小さな神社の前で制服を着た一人の少女がいた。 美しい艶のある長いポニーテールをシュシュで結ったツリ目の綺麗な顔立ちをした勝気そうな少女だ。 彼女の名は"伏見芹香"。 雪華の幼い頃からの親友だった。 雪華は芹香に気がつくと慌てて彼女の傍へと駆け寄った。 「芹香ちゃん、ごめんね。待たせちゃって……」 「ううん、大丈夫だよ。そんなに待ってないし、むしろ私もさっき来たばっかり」 申し訳なさそうな顔をする雪華に芹香は明るい声で雪華に答えると手にしていた携帯端末をスカートのポケットの中へと入れた。 雪華と芹香の二人は並んで通学路を歩き出した。 「でも雪華が私より遅く来るなんって珍しいね。ひょっとして昨日も夜遅くまで原稿をしていたの?」 「うん。昨日小説書いていたらPCの前でそのまま寝落ちしちゃって……」 「朝ごはんはちゃんと食べてきたの?前みたいに締切前で忙しくって食べるの忘れたりしていないよね?」 「大丈夫、ちゃんと食べたよ。今朝おじいちゃんが帰ってきてて朝ごはん作ってくれたの」 「おじいさん帰ってきたの!珍しいね。いつも半年に一回か、一年に1回のペースでしか帰ってこないのに。でもちゃんと食べているのなら良かったよ。もし何かあったら何時でもいってね。ご飯作りに行く事ぐらいは出来るからさ」 親友である芹香が雪華の事を食事の事で心配するのは無理はなかった。 雪華は高校生にて作家をしていた。 一年前にある出版社の新人賞に自分が書いた小説を送った事が切っ掛けだった。 幼い頃から本が好きで、物語を書くことが好きだった雪華は自然と作家になりたいという夢を抱くようになった。 一年前初めて書いた小説を出版社の新人賞に送ったところは入賞し、晴れて作家の仲間入りを果たし、小説家の仲間入りを果たしたのだった。 作家には当然締切というものが存在する。 学生と作家の両立をしている雪華は一人暮らしという事もあり、締め切り前の時は時間に追われるあまりに食べることを忘れてしまう事があった。 以前食事を数日抜き、学校に登校している最中に倒れてしまった事があった。 その事もあって芹香は雪華の食事などでやたらと心配し、気を使ってくれていた。 もっともそれ以外でもあるのだが……。 「心配してくれてありがとう芹香ちゃん。芹香ちゃんってお母さんみたいだね」 「お母さんじゃなくって親友です。だって心配なんだもん。雪華って一つの事に集中し出すと周りとか見えなくなってしまうんだし……。それに雪華は私にとって大切な親友だからね。心配するに決まってるでしょ」 「……芹香ちゃん……」 芹香の言葉に雪華はじーんとしながら彼女の顔を見る。 そんな芹香は少しだけ照れているの明るい声で話題を変えた。 「あっ、知ってる?今日ね井澤先生の変わりに新しい臨時の先生が来るんだって」 「へぇ~。そうなんだ……。井澤先生も先週で産休に入ったばっかりだったもんね。だけどやけに臨時の先生が来るのが遅かったね。普通は産休に入る前に授業とかの引き継ぎとかもありそうなのに……」 雪華は考えるようにそう芹香へと言った。 それに対して芹香は顎に指を当て、何か考えるような仕草で答えた。 「なーんか噂によると井澤先生の変わりがなかなか見つからなかったみたいだよ。まっ、教師も公務員だし、今色々あるからね」 「相変わらず芹香ちゃんは言い方がシビアだなぁ……」 「私は現実的なの。それよりもどんな先生が来るのか今から楽しみ!やっぱり理想は大人で頼れる先生かな。もちろんイケメンで!タイプはちょっと冷たくても良いけどやっぱり優しい人が良いかな。雪華はどんな先生が良い?もしくはどんなタイプが良い?」 いきなり好きな男性のタイプを問われ、雪華は苦笑いを浮かべ軽く手を振りながら、 「私はそう言うのはよくわかんないかな」 などと曖昧に答えた。 それに対して芹香は少しだけ呆れたように軽くため息を吐いた。 「そっか。なら仕方ないね。……でも本当に気になる人とか、良いなって思った人とかっていないの?例えば雪華の編集の担当さんとか」 「………担当……」 突然そう言われ、雪華の中である人物が一瞬脳裏を過ぎった。 漆黒のような黒い髪。 ブルーサファイアのような蒼瞳。 "失敗"と"妥協"と言うものを知らない傲慢さと、容赦ない言葉。 雪華は頭の中にあったそれらを慌てて振り払う。そして再び彼女へと僅かに困った表情を浮かべた。 「……やっぱりそんな人はいないかな……」 「そっかぁ……。雪華は可愛いし、なんか勿体ないなぁ」 「私より芹香ちゃんの方が可愛いよ」 つまらなさそうに言う芹香に雪華はそう思った事を彼女へと口にする。 小柄で子供っぽい自分より、大人びている親友の方がずっと綺麗だと思っていた。 絹のようにサラリとした美しい顔立ち、モデルのように整った顔立ち、スラリとした長い手足。 それは誰からの目からしても魅力的な女の子だと言えるぐらいキラキラと輝いていた。 明らかに自分とは違う。 だけど自分とは違うとはいえ、雪華は芹香の事が友達として好きだった。 どんな時でも一緒だった親友。 だからこそ純粋に出た言葉だった。 「そんな事ない。少なくとも私は女の子ぽいっ雪華の方が好きかな」 そう言って芹香は雪華へと淡く微笑んだ。 「そう言えば雪華の新作っていつ出るの?出たら教えてよ。絶対に読むから」 「今担当さんと新作のプロットと原稿の打ち合わせをしている段階だからまだお店に並ぶのはもう少し掛かるかな」 「そっか。早く読めないのは少しだけ残念だけど、楽しみだと思えばいっか。でも雪華の新作どんなお話が本当に楽しみだなー」 嬉しそうに言う芹香の言葉に雪華は内心複雑な思いを抱えながら彼女へと曖昧に笑って答えたのだった。
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