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暫くして街を抜けたあと、閑散とした住宅街を雪華は歩く。
もうすっかり日は落ち、周りは薄暗かった。
そんな中。
街の中からずっとカイトは雪華のあとを着いてきていた。
最初は無言で無視を決め込んでいた雪華だったが、次第に痺れを切らして、キッとした顔でカイトの方を振り返った。
「どうして、嵐山さんが私の後を付いて来ているんですか!」
「だって、俺も帰る方向はこっちだもん」
「はぁ?だって、この辺マンションも、アパートもありませんよ?」
雪華の言う通り、この住宅地の周辺にはマンションもアパートも立ってない。
雪華が不思議そうに思っていると。
彼は意外な言葉を口にした。
「だって、俺拾われたんだもん」
「拾われたって?また私をからかってるんですか!」
カイトに詰め寄る雪華にカイトは平然と彼女に答える。
「いや、マジだって。まぁ、正確にはお前の爺さんにだよ。お前の自分の苗字って”有澤”だろう?」
「そうだけど……。何でおじいちゃんが嵐山さんを……」
「俺、この前まで外国に行って、最近こっちに帰ってきたばっかなんだけどさ、訳あって住むとこなくって公園で野宿していたら、お前の爺さんに会ったんだ」
「おじいちゃんに?」
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