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初めてその美しい宝石を見た、その日を忘れることはない。
あれは……一目惚れだった。
砂漠の王国ジャージャルマン。その王家イディアム家に代々仕える名門二家。「獅子に鷹と狐あり」と謳われる狐の家――ムタファ家。
父はムタファ家当主の息子シェット。母は第三夫人。その長子として生まれ、ノムと名付けられた。
その日、母と暮らす家に父と客人がやってきた。
母は緊張で身体が固くなり、ムタファの髪と眼の色の正装を着させられた。「失礼のないようにね」と何度も何度も言われ、父と客人が待つ部屋に通された。
「ケリさま……こちらがノムでございます」
「おお!お前がノムか!話には聞いてるぞ」
父に肩を抱かれていなければ、腰が抜けていたかもしれない。
名を知らずともわかる。その姿が物語っている。――王族だ。
王家に仕える家に生まれ、その使命を果たすために勉学に励んでいる。しかし、主の顔を見たのは初めてだった。
「俺はケリグマリグ。で、こっちが息子のエシャムサタムだ」
「!」
褐色の肌。赤い髪と――赤い狐目。
「お前の家のおかげで、こんなに素晴らしい芸術品ができた。カサエには感謝してもしきれぬ」
カサエとは、シェットの妹の名。王宮のハーレムに招かれた彼女が、王族ケリグマリグとの間に新たな王族を設けた。
「もちろん、お前たちにもな」
「なにをおっしゃいます!こんな名誉なことはございません」
つまり、自分とこの赤髪赤眼の王族はいとこになる。この狐目は自分たちの血に違いない。なのに、どうしてここまで違うのか。これが王族の血か。
「我が息子ながら、本当に美しい。まさか先祖返りが生まれるとはな」
この国を建国した初代王。その運命の番は赤い髪と眼の持ち主だった。
その奇跡にムタファ家も大いに沸いた。
「エシャ。このシェットの息子はお前と年頃が近い。仲良くしてもらえ」
「えっ」
思わず声が出た。
王族と仲良くなど、身分違いも甚だしい。恐れ多い。
「なんだ、不満か?」
「と、とんでもございません!!」
「なら、良くしてやってくれるとうれしい」
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