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「運命の番にこだわりがあったりとか…?」
「運命?別に?そこにこだわってたら一生恋人なんかできないだろ」
レブロの両親は運命の番。
「お前の言いたいことはわからなくもない。俺たちにとって『運命の番』は無視できないよな」
「……」
「相手、Ωか?」
「はい」
運命はαとΩの間にだけある絆。Ω同士であるリシと恋人は運命の番ではない。
「うちは両親が運命だし、作品でやることも多い。そりゃ運命ってのは特別だ。特別で残酷だ。結ばれることもあれば、引き離されることもある。あれは恋愛云々って話じゃない、魂の問題だからな。でも、運命だからってなんでも簡単にいくわけじゃない。うちも父さんがそれはもう熱烈に口説いて口説いて口説いてやっとだからな。その努力を運命の一言で片づけられるのは父さんが可哀想だし、親父もキレるな」
レブロの両親はともに男。レブロはαの父を「父さん」、Ωの父を「親父」と呼ぶ。
「会わなかったら会わなかったでいい。どうしても会いたいわけじゃないし、どうしても会いたくないわけでもない。まぁ、お前がビビるのもわかる。どれだけ愛してても運命に勝てない時ってのもあるからな」
「……」
リシは絶対に会いたくないし、会ってほしくない。今、リシが最も恐れているものは『運命』だ。
例え出会ったとしても、恋人を選ぶ自信はある。運命の番じゃなくても、恋人こそが自分の運命だと思っている。Ωの男が自分の運命の人だ。彼以外を選ぶなんてありえない。それでも、恐ろしい。時々、自分から去っていく愛しい背中を夢に見て飛び起きる。
「でも、運命が現れなくても心変わりはあるだろ。この世で運命の番に出会うやつなんてほんの一握りだけど、別れるやつらは山ほどいる。俺だって運命が理由で別れたことなんかない。別れる原因は運命だけじゃないし、むしろ運命以外で別れることの方が多い。気持ちはわかるけど、そこまでビビる必要もないと思うけどな」
「……」
「それよりお前、気をつけろよ。警戒すべきはどっちかっつーとこっちだろ」
「え?」
「お前の人気は凄まじいからなぁ。ぶっちゃけやべーやつも多いじゃん?」
リシは口を噤んだ。
パラオキメキスは熱狂的なファンに支えられている。その中には悪質と呼ばれる人たちがいるのも事実で、被害に遭うこともある。特にリシには悪質なファンが多く、何度も引っ越したり連絡先を変えたりしなければならなくなった。
「俺たちはファンあっての存在。そりゃファンは大事で大切にしなきゃいけねぇけど」
レブロは愛する家族が住む実家を出てセキュリティ万全の家に一人暮らし。それは過激なファンから家族を守るため。レブロの隠さない、なによりも優先する家族への愛に嫉妬し、家族に危険な矛先を向ける輩がいる。
「巻き込みたくないなら隠す方がいいだろうな。ただ、お前の色恋は確実に大ネタだ。探ってるやつは多いだろう。気をつけろよ」
「……わかってます」
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