79人が本棚に入れています
本棚に追加
今年一番の暑さはビールの売り上げをグングン伸ばして、酒屋を営む我が家としては大繁盛な一日だった。
働く俺としても早くビールが飲みたくて、閉店時間になるとすぐにシャッターを下ろす。
親父が風呂に入っているのを確認すると、そそくさと冷蔵庫から売り物のビールを3缶取り出して自分の部屋に直行する。
部屋に入るなり缶ビールを開けて口をつける。
苦味を楽しむ暇も無いまま、喉を鳴らしてビールを飲んだ。
「ぷは~!!生き返る!」
「また盗んだのかよ?」
ベランダの外から声が聞こえて、ビール片手に薄いカーテンを開けた。
「お疲れ、早かったんだな?」
「あぁ‥」
隣の家に住む慎太郎は小さい頃から仲が良く、端正な顔立ちは正直俺のタイプだが親友だ。しかも頭の出来もすこぶる良くて、今では大手企業のサラリーマン。
世の中は本当に不公平に出来ていると、慎太郎を見ているとつくづく思う。
慎太郎は疲れた表情で溜め息を吐くと、やめたはずの煙草を取り出し口に咥えて火を点けた。
最初のコメントを投稿しよう!