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「どうしたの?何かあったの?マリー」
「マリーと呼ぶな!頼むからもう二度と呼ぶな!」
「じゃあ‥麻里央…」
「その名でも呼ぶな!!」
「難しいわね?パパ…」
「本当だよ!なぁ?ママ」
一度もパパやママとは呼んだことのない俺の前で、気持ちの悪いラブラブ夫婦が熱く見つめ合う。パックしたお袋とハゲ散らかした親父は、ビールを盗もうとしている俺には気付いていないようだ。
二人の脇を通り抜けようとしたところで、親父が俺の首をネコのように掴んできた。
「どうすんだよ!そのビール!!てめぇ給料から引くぞっ!」
「慎太郎がなんか変なんだよ!」
「え?慎太郎ちゃんに何かあったの?」
パックで表情は分からないが、たぶんお袋は不安な表情をしているのだと思う。慎太郎信者のお袋を丸めこもうと、少し大袈裟に捲し立ててみた。
「そりゃ大変だな!おい麻里央!これも持っていけ」
「そうね、あっ!マリー!おつまみチーズもあるから持って行きなさい」
この世の中は本当に不公平だと思う。慎太郎を知る人間を見ているとつくづく思う。
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