0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
ある日帰宅すると、部屋から彼女の私物全てが消えていた。電話もメールも繋がらず、実家にも帰っていなかった。彼女が働いていた花屋にもその姿は無く、リョウジは途方に暮れた。
妻は何時から夫の浮気に気付いていたのだろうか。周到な準備をしていたと言う事は、かなり前から知っていたという事だろう。
ワンワンワンワン!
耳元で響く急な声に飛び起きる。一年程前にユリカが連れて来たミニチュアダックスは、いまだにリョウジを受け入れてくれない。今も彼は再びテーブルの下に引き籠り、クッションをボロボロにしながらリョウジへの攻撃の機会を窺っている様子だ。リョウジは深い溜息を吐くとガックリと肩を落とした。
最初のコメントを投稿しよう!