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祝い花
「いやぁ、それにしてもずいぶん届いたな。まるで、白い海だ。」
真新しいオフィスの一角を埋め尽くす胡蝶蘭。移転の祝いにはオーソドックスな生花だ。その中にはふんぞり返るように笑う、恰幅の良い初老の男性。一昔前の社長のステレオタイプだ。
「この光景こそが、豪徳社長のお人柄が表すところかと。きっとまだまだ届くことでしょう。」
その一歩後ろで凛とした佇まいの女性が、男性を持ち上げる。
「これでは、花専用の部屋を用意しなくてはな。
柳楽君、そこのガラス張りの部屋を花の部屋にしてくれるか?」
豪徳に柳楽と呼ばれた女性は、少しだけ表情を曇らせるも、すぐにその整った顔立ちに戻り聞き返した。
「この部屋は弊社の活発な議論を公開するために作られたミーティングスペースですが、構いませんか?」
「構わん。」
「かしこまりました、すぐに。」
そう言うと柳楽 香織は、スマートフォンを取り出して電話をかけた。
「施設部ですか?わたくしです、柳楽です。」
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