狂喜

　という訳で翔平は薬瓶一本分の笑える薬を手に入れ、早速、一粒飲んでみると、何だか訳もなく笑えて来て、こんな愉快な気分って初めてだ！と味を占め、病みつきになって、もう一粒もう一粒とどんどん飲んで行き、到頭、ＬＳＤを摂取したように幻覚症状が現れて様々な幻を見るようになった。
　その内、普段、恐れていることが自分自身に反映して自分が新型コロナウィルスに感染したと錯覚してしまい、俺はコロナだ！俺はコロナだ！と騒ぎ出し、完全に狂って衣服を脱いで裸踊りを始め、勢いマスクもせずに外へ飛び出して病院まで駆け込んで行った。
　それからも俺はコロナだ！俺はコロナだ！と騒ぎ立て喚くわ笑うわ裸踊りするわで病院にいる患者や医療者らを大混乱に陥れた。
　で、「こいつは手に負えん！つまみ出せ！」と医院長が叫ぶと、看護師らが躍起になって翔平を取り押さえ、急いで病院の外へ放り出した。
　その後、翔平は本当に新型コロナウィルスに感染して笑いながら呼吸困難に陥って遂に笑えなくなって悶絶した末、泡を吹きながら息絶えてしまった。
　あの薬にはマジックマッシュルームに含まれるシロシビンやシロシンがたっぷり配合されていたので翔平は笑い茸を沢山食ったのと同然となって狂喜したのち苦しみ抜いて絶命した訳だ。
　こうなる手筈を取ったのは、あのセールスマンに化けた誰あろう死神であった。