狂喜

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 新型コロナウィルスが感染拡大して誰も彼もコロナ禍前の当たり前の暮らしが出来なくなって不安な日々を送る中、寧ろよく笑うようになった男がいた。  名を翔平と言って、こんな時だからこそ笑顔でいようと言われるし、笑うと免疫が高まってウィルスに強い体になれると思い込んでいるからだ。  要するに周囲の者を元気づけようというのではなくて自分が助かろうと思って笑っているのだ。  それが結果的に周囲の者の歓心を買うことになるから一石二鳥だと思って。  謂わば、お為ごかしの笑い。  打算的で貪欲な笑い。  面白くなくても笑うのだ。  空笑い。作り笑顔。愛想笑い。お追従笑い。  いつもへらへらしている。  やだやだ。  こういう奴を見ると反吐が出る。  唾棄すべき笑いだ。  そう診るのが妥当と言えようが、当世の人間は元々上滑りな見方しか出来ない上に上辺の明るさを重視する傾向が強まって誰にも笑顔を強要する弊害から、くだんのような男であっても良しとしてしまうのだ。それどころか近頃ではへらへらする者が罷り通るようになってしまった。
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