ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

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[マッシュ] 宝探しは面白かったぜ。ワクワクした。見つけちまったらもう、つまんないもんな。  ヘブン・スクエアを見れたのも、よかった。色々、大事な事がわかった気がする。 [ウィロー]  私は帰るわ。元の場所へね。 [僕]  ヘブン・スクエアへ? [ウィロー]  ええ、そう。好きでも好きじゃなくても、私はそこの住人なの。  私は、本当にまだ子供。だから、オウチに帰るのよ。 [マッシュ]  送っていくよ。  僕達は別れた。  出会った場所と同じヘル・マーケットで。  今後、もう二度と会う事はないだろう。そうお互いに解っていた。  さっぱりした別れだったな。泣いたりとか、そんな事は誰もしない。  ウィローはヘブン・スクエアで暮らし、僕達はヘルズ・スクエアで暮らす。どっちが良い悪いじゃない。それが自然で当たり前だと思っていたし、素直に受け止められたんだ。 「さようなら」  そう言い会って手を振り、そしてお終い。 9・  あの日から三年後、十五歳の時、僕は島を出た。  一人で。無一文。ゼロからのスタートだった。最初は本土で暮らし、仕事を選ばず働いて、その後、別の国に移った。  今は働きながら学校にも通い、それはそれは忙しい。驚いた事に、ヘルズ・スクエアのルインズで、プロフェッサーに習った授業が、けっこう役に立っている。  とはいえ、時には気が滅入る。学校のお金やアパートの家賃は、支払いを催促されてばかりだし、そっちを払うと食べ物を買うお金が足りなくなる。なんだかいつも空腹で、へたばってしまう事も多い。  なにより淋しいな。家族が傍にいるのといないのとでは、本当に違うよ。ホープ島では、ヘルズ・スクエア全体が、僕の家族だったのに、ここではそうじゃない。一人で泣く事も随分と増えた。  でも、いいんだ。自棄になったりはしない。自分で選んだ道だ。僕は満足している。  今までも、これからも、ありのままの現実を受け入れて生きていくよ。  そして・・・。いつも、どんな時も、常に変わらず影の様に僕に寄り添い、支えてくれる、ある人への思いが、僕に力を与えている。  普段はそんな事はしないけど、今日だけは、ちゃんと声に出して言おう。 「かけがえの無い友、マッシュへ。   僕はいつも君を想っている。また会う日まで、僕を見守っていてくれ。君に恥じない生き方をするから。大好きだよ。 エッグ」             パートⅡに続く
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