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[僕]
憧れてるのさ。あの時の君は、本当にかっこよかったよ。
[マッシュ]
ブッ倒れたのにか?
[僕]
ロトン・アレーの、ウンチとドロ山のど真ん中にね!
気絶から醒めるとすぐ、君は胃の中のものを、残らずそっくり、吐き出したっけね。
それでも、やっぱり、最高にかっこよかったんだよ。
[ウィロー]
本物のヒーローって、案外、そんなかも。
[マッシュ]
驚くのは、てんでまだ早いぜ、ウィロー
エッグなんか、もっとずっとたまげる事、平気でやってんだからな。
[僕]
別に。大した事してないよ。
[マッシュ]
ホラホラ、ソレソレ。これがいつもの手なのさ。
エッグはいつだって、自分は何にもしてもせんって顔で、シラッとしてる。
ウィロー、こういう奴が、一番スゲエんだぜ。
[ウィロー]
何をやったの?
[僕]
本当に大した事じゃないんだよ。
[マッシュ]
ヘルズ・スクエア中が知ってるんだ。すっとぼけようったって、無理があるさ。
いいか、ウィロー。ドライ・ボーンズ・アレーの事は話しただろう?
六ヶ月前、あそこで爆発があった時にな、地面深くに埋まってた鉄の棒みたいなのが、爆風に巻き上げられて、吹っ飛んできたんだ。
それが、ねじ曲がって、先が槍みたいに鋭く尖ってんのよ。
空高く舞い上がったと思ったら、クルクル回りながら斜めにヒュウッて落ちてきて、その真下にサンシャインがいたんだ。
[ウィロー]
嘘・・・。ひどい。
[マッシュ]
サンシャインはすくみ上って動けなかった。
俺も、その場にいた誰もが、サンシャインはもう死ぬって思った。
なのになあ・・・動けないんだ。バカみたいにポカーンと突っ立ったままでさ、声も上げられなかった。
それなのに、こいつときたら・・・エッグだけはさ、違ったんだ。
まるっきり落ち着き払って、スタスタ歩いていくなり、サンシャインをそっと横に押しのけた。ちっとも慌ててないんだもんな。静かでさ。
鉄の棒は、サンシャインには当たらなくて、その代わりにこいつの・・・エッグの肩にぐさっと深く刺さっちまったんだ。
[ウィロー]
ヒィー!想像するだけで、背中がチリチリするわ。全く、何なのよ、それ。
[マッシュ]
それから、やっと大騒ぎが始まった。
大人達も駆けつけてきたけど、あっちに走ったり、こっちに走ったり、ぶつかりあったりしながら泣き喚くばかりで、何にも出来やしないのさ。
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