ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

16/52
前へ
/52ページ
次へ
 サンシャインはのびちまうし、他の子達もバカスカ倒れて、ありゃ、何もかもが全部、容量オーバーして、頭がパンクしちまったんだろうな。 [ウィロー]  エッグは?エッグも倒れたの? [僕]  ごめん。よく憶えてないんだ。 マッシュ  俺は、よく憶えてるぜ。あの時の事は絶対に忘れられない。頭に焼きついちまった。  エッグは・・・エッグは、辺りをちょっと見渡して、フウッて軽くため息をついた。まるで、他の連中が何をパニクッてんのか、まるでわかんないって顔でさ。  そいで、あっさり自分の肩に片手を回して、鉄の棒をグイって一気に引き抜いた。そいで、横にホイッて捨てた。棒はドライ・ボーンズ・アレーの泥道に突っ立って、フルフル揺れてたぜ。それも俺ははっきり憶えてるし、エッグの肩から、ドボドボ血が出てたのも憶えてる。  それなのに、こいつときたら、まだ慌てないんだ。倒れてるサンシャインの傍らに片膝ついて屈みこんで、彼女が怪我してないか見てやってた。そうだよな、お前。 [ウィロー]  痛かったでしょう、ものすごく。 [僕]  最初は痛みを感じなかったんだ。しばらく経って、やっと少し痛くなってきて、それがだんだんひどくなっていって、頭がグルグル回転しだして、目の前が暗くなってきてね。  フラッときた時、マッシュがガシッって抱きかかえてくれて・・・僕は気を失っちゃったんだ。 [ウィロー]  よく生きてたわね。 [マッシュ]  こいつ、その後でスゴイ熱だして、ぶっ倒れちまった。ひどかったんだぜ、本当に。  うんうん言ってうなされたり、痙攣したり。ありゃ、悪いバイキンが体に入ったんだな。  みんな心配して心配して・・・。情けないよな。だって、そうだろ?病室にはヘルズ・スクエア中の人間が集まっていたのに、苦しむエッグに何もしてやれなかった。例の薬も残り少なかったし、見守る事しかできなくて。俺、ずいぶん泣いたよ。苦しかった。 [僕]  僕も辛かったよ。体中がものすごく痛くて、頭がおかしくなりそうだった。  でも、いいじゃない。結局、僕は助かったんだから。 [ウィロー]  どうして?何でそんな事したの? [僕]  わからないな。僕は過ぎた事は気にしないんだ。大事なのは今だもんね。 [マッシュ]  エッグはいつもこうなんだ。昨日もすでに過去、なんだとさ。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加