ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

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 あ、でも、その手はワイルド・キャットには使えないぜ。昨日、貸したハンカチ返せって言ってだぜ。洗濯しないで返してくれってさ。 [僕]  洗濯なんかしたら、かえって汚れるよ。ミザリー・リバー(みじめ川)もウェル(井戸)も、水が汚すぎるからねえ。 [マッシュ]  ブブ―ッ。大外れ。そんな理由じゃない。  ワイルド・キャットは、お前が触れた物は全部、自分の宝箱にしまい込んでるんだ。  あいつ、お前に夢中だからな。 [僕]  やめてくれよ。 マッシュ  何でだよ?誰かを好きになるって悪い事じゃないだろ。大事な事だ。 [僕]  相手がワイルド・キャットじゃね。あの子のオムツ替えてあげたの、憶えてるもの。 [マッシュ]  あいつのウンチはすごく臭かったからな。その時はまだ、赤ちゃんだったんだから、仕方ないけどさ。  お前、いつもオムツ洗い、引き受けてたもんなあ。  でも、そんな事、ワイルド・キャットには言うなよ。彼女、傷つく。 [僕]  わかってるよ。 [ウィロー]  あなた達って、なんかいいな。ヘブン・スクエアの人達とは、全然、違うもの。 [マッシュ]  へえー!こんなトンデモ生活、いいなんて初耳だぜ。お前、自分の言ってる事、わかってんのかよ? [ウィロー]  うん。わかってると思う。わかってて言ってるの。 [僕]  まじめな話なんだね? ウィロー  そう。まじめな話だわ、エッグ。ヘブン・スクエアの人達は何でも持っているように見えて、何も持ってないわ。 [マッシュ]  はあ?何だそりゃ、訳わかんねえ。  ウィロー、お前さ、やっぱり少しおかしいんじゃないか?  初めて会った時から、心配してたんだ。  ヘブン・スクエアで生まれ育って、あっちはこっちよりマシな地域なんだし、多分、お前は不自由ない生活してるんだろ?なのにガリガリで、まっ白けでさ。半透明人間みたいだからな。  具合悪くないか?大丈夫かよ? [ウィロー]  うーん・・・。うまく話せないんだけど。  ヘブン・スクエアの人達は、何もしてないのよ。する事が無いのかな。一日がボーッとしたまま過ぎていく。家に閉じこもったままの事も多いわ。  七軒しか家がないのに、みんな知らない人みたいで、私、一人も友達がいない。 [マッシュ]  ウソだろ。信じられない。どうして、そんな事になる?
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