ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

19/52
前へ
/52ページ
次へ
 私はいじめられっ子じゃないわよ。  ヘブン・スクエアには、子供が五人か、たぶん六人ぐらいしかいないし、ほとんど会わないから。  大人達もせいぜい挨拶くらいで、お互い付き合わないんだもの。 [マッシュ]  それでお前、よく話し方をさ、忘れちまわないよな。みんなで遊べないなんて辛いよ。ワイルド・ビーだったら、気が狂うな。 [僕]  学校には行かないの? ウィロー  学校はないわ。半年に一回、本国というか、本土の方から先生がやってきて、家を一軒ずつ回って教えるの。家庭教師ってこと。  でも、あなた達だって、学校には行ってないんでしょ? [マッシュ]  プロフェッサー(教授)が、週に四、五回だけど、ルインズ(廃墟)で学校を開いてくれるんだ。  崩れかけた、元は倉庫だった建物さ。屋根は二年前に落ちちまった。  プロフェッサーは、六十になる歯抜けじいさんで、フガフガモゴモゴ、何言ってるのか、解りにくくて仕方ねえ。  だから、みんな何とか聞き取ろうと必死だ。鼻息すら押さえてさ。  クリスタルでさえ、一言だってオシャベリしない。普段は、口が五、六個ついてんじゃないかってくらいの、とんでもないオシャベリなのにな。 [僕]  先月は、野生動物について話してくれた。  今月は宇宙についての授業なんだ。  だから、マネーマネーなんかは、きっと毎日、ルインズに通い詰めるよ。這ってでも行くだろうね。マネーマネーは、星が好きなんだ。 [マッシュ]  読み書きや、簡単な計算は、スパンキーとレインが教えてくれる。  スパンキーはエンジェルのでかい方の兄貴で、レインはサンシャインの姉ちゃんなんだ. 俺達、けっこう頑張ってるぞ。 [ウィロー]  いいな。私は恐竜の事とか、すごく興味あるのに、誰も教えてくれないの。昔に、パパが恐竜について話してくれたけど・・・もう忘れちゃったから。 [僕]  家庭教師の先生に聞いたら? [ウィロ]ー  先生は決められた事しか教えられないみたいよ。算数とか国語とかね。 [僕]  頼めばいいじゃない。恐竜について話して欲しいって。 ウィロー  頼めないな。だって・・・そんな親しくないしね。 [僕]  ふーん・・・。 [マッシュ]  恐竜の事なら、よーく知ってるぜ。俺も大好きだからさ。  プロフェッサーは特別に、二か月半も恐竜について話してくれたんだ。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加