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もっとも、真の姿はまるで見えていなかった事が、後でわかったけど。
今では少し不思議に思う。
ヘブン・スクエアとヘルズ・スクエアは、あんなにも違っていて、その差は明らかだったのに、あの頃の僕らは、どうしてそれを変だと思わなかったんだろう。不満も持ってなかった。
それは、今でも同じだけどね。僕は腹が立たない。羨ましくも思わない。
望んでも望まなくても、僕はヘルズ・スクエアに生まれた。そこで育ち、そして今の僕もある。その事に満足してる。昔も今もね。
ウィローとの出会いは慌ただしかった。僕と顔を突き合わせて、開口一番、彼女が言ったのは「私をかくまって!」だった。
ヘブン・スクエア側を見てみれば、懐中電灯の光が二つ、あちこち動き回っていて、常識で考えれば、これは彼女を探している連中なんだろう。
初対面の相手がこんな状況って、普通なら訳がわからないし、どうしていいかもわからない。
でも、幸いな事に、僕はこうした場合の対処に慣れていた。ヘルズ・スクエアでは、こんな言葉を聞くのは、日常茶飯事なんだ。
ワイルド・ビーがキャンディとケンカして、腐ったオレンジを投げつけた時も、このセリフがでた。復習に燃えるキャンディから、ワイルド・ビーをかくまってやらなくちゃならなかったんだから。なんと三日間もね。
サイクロンがサンダー・キッドのビー玉を割っちゃった時も、サイクロンをかくまうハメになった。代わりのビー玉が見つかるまで、こちらは長引いて二週間。
ヘルズ・スクエアでは「僕(あるいは私)をかくまって!」という大騒ぎがしょっちゅうあって、トラブルの解決は全て、なぜか僕とマッシュに押し付けられる。
だから、手慣れたものだ。まずは、逃亡してる方を素早く隠す。事情を聞き、怒れる相手と話をつけるのは後回し。両者の頭がちゃんと冷えてからだ。これがまた、なかなか冷えないんだけどね。
ヘブン・スクエアの女の子だって、同じようにすればいい。
僕は、ヘブン・スクエアに通じるドアを引っ張った。そちら側には当然、いつも鍵が掛かっているんだけど、この時はなぜか外れてたんだ。ウィローを素早く引っ掴み、ヘル・マーケットの中に引きずり込む。
そして、手近なゴミの山に、かなり強引に押し込んだ。
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