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とぶっきらぼうな返事。
「マネーマネーに寝かしつけを頼んできたんだ。おかげで明日は、あいつの当番を代ってやらなくちゃなんない。よりによってオムツ洗いの日だぜ。マネーマネーのヤツ、ホントにちゃっかりしてやがる」
僕は、思わず笑った。
「サンダー・キッドはすぐ寝るさ。マネーマネーが、宇宙の成り立ちなんて話を始めれば、誰でもすぐにアクビが出るよ」
僕が歩き出すと、マッシュは黙ってついてきた。その顔はキリリッと引き締まって、真面目そのもの。月明かりに光って美しかった。
マッシュの良い所は、数えきれない程あるけれど、その一つがこれだ。緊急時に、あれこれ質問しない所。
僕もマッシュも、大抵のことは、一人で対処できる。わざわざ呼び出したりする時は、質問に答えたりするヒマの無い時なのさ。
ホープ島は静かだった。雨は止み、珍しく湿気も少ない。さっぱりした空気。朧ながら次第に明るくなっていく月光。ミザリー・リバーがジャブリジャブリと立てる音。
僕はマッシュが好きだ。心から。それを、ひときわ強く感じていた。このまま、ずっと歩き続けていたかった。
3・
丁度いいタイミングでヘル・マーケットについた。ウィローは目が覚めて、しばしボーとし、ようやく頭が回転し始めた所だった。
彼女は僕とマッシュを見つけると、ふらつきながらも、なかなか優雅に立ち上がり、
「さっきは、ありがとう・・・」
と、つぶやいた。
僕には、ウィローの様子が、なんだか不思議なものに思えた。なんて言ったらいいのか、現実に存在する人じゃないみたいな。多分、ヘルズ・スクエアの女の子と、感じが違うからだろう。
僕達は見つめ合ったまま、動けなかった。
お互い、どうしたらいいのか、さっぱりわからないんだ。
彼女はヘブン・スクエアの人。僕たちは、ヘルズ・スクエアの人。別世界に住んでいる。
君達だって、突然、水星人が目の前に現れたら、何て言ったらいいかわからないだろう?
「君は誰?」
と聞きたい。向こうもだろう。
「どうして、ここにいるの?」
と聞きたい。向こうもだろう。
でも、質問するのは躊躇われた。向こうもなんだろう。
で、黙ってるってワケ。
十分ぐらい経ってからかな、向こうが先にしびれを切らした。
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