ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

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 彼女は僕を見て、マッシュを見て、〈壁〉の先に広がるヘブン・スクエアをすかし見て、また僕達を見つめてから、こう言った。 「私、やっぱり行かなくちゃ」  ちょっと待って欲しい。そう言われて、はいそうですか、と行かせる訳にはいかないじゃないか。誰かに追われてるらしいのに。どこに逃げるのかもわからないのに。  でも、口火を切ってくれたのは助かった。 「それもいいけど・・・その前に、落ち着いて話そうよ」  と言えたからね。  マッシュは、もっと単刀直入だ。 [マッシュ]  やあ、俺はマッシュ。こっちはエッグ。  俺達に、なにか出来る事ないか? [ウィロー]  助けてくれるの?だったら言うけど、実はね、私・・・。 [僕]  もう?もう事情、ブチまけちゃうの?ずいぶん早いね。もう少し引き延ばす所じゃないのかな。 [マッシュ]  もうって、それ何だよ?  ボヤボヤしてたら、人生、終わっちまうぜ。  年とるまでグズグズ悩んでるなんて、つまらねえ。早いとこ相談しちまった方がいいに決まってるだろ。  そこの・・・お前さ、いい判断してんぜ。       まず、簡単な質問だけどよ、何て名前だ? [ウィロー]  ウィロー。柳って意味なの。 [マッシュ]  じゃ、ウィロー。いいから、さっさと話しちまえ。 [ウィロー]  私、困ってるの。 [マッシュ]  そんな事、わかってるさ。  幸せ一杯、悩みゼロなんて奴が、家出して、夜、こんな所を一人でフラフラしたりしないだろうが。  煎じ詰めたとこ、ズバリ言っちまいな。 [ウィロー]  家にいたくない。いられないの。 [僕]  どうして? [ウィロー]  宝を見つけなきゃならないの。それまでは、とても家には帰れないわ。 [マッシュ]  えっと・・・ちょっと待って、待ってくれ。  さすがにズバリ言い過ぎだ。わからん。 [僕]  そら、言わんこっちゃない。もう、話についていけなくなってるじゃない。 [ウィロー]  私のせいじゃないわよ。マッシュ・・・それにしても変な名前・・・あんたがズバリ言えって言うから、そうしたのに、・・・。 [僕]  今、気が付いたんだけどね。  みんな、平静を装って、かなり動転してるよね。取りあえず座ろうよ。  ほら、ここに丁度いいボロ布の固まりがあるから・・・。 [マッシュ]  おっと、まあそうだな。座れよ、ウィロー。  なるほど、エッグ、お前の言う通りだ。
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