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よく考えてみれば、最初からおかしいって、そう思わなきゃいけなかったんだ。ホープ島の気候じゃあ、それにあの地質じゃあ、こんな青々とした草原ができる訳がない。
ヘルズ・スクエアと何が違ったって、天候だけは同じだもんね。
でも、まさか人口の草地だったとは・・・。予想外だよ、いくらなんでも。
もちろん、木も花も本物じゃなかった。
夜目遠目には美しくても、近くでよくよく見れば、花びらには埃が溜まり、草は乾いた泥がこびりつき、木はグラグラと妙な動きをして危なっかしい。草の隙間からは、ジメジメの地面と水たまりが覗き、臭かった。
ヘブン・スクエアの自然は自然じゃない。自然な物なんて、何一つなかったんだ。
僕とマッシュは、しばし呆然として動けなかった。
足の痛さが最大の原因だったけど、その光景の異様さに度胆を抜かれて、どうしていいのかわからなかったというのもある。
自分がどの世界に飛んじゃったかわからない。そんな時は、むやみに動き回らない方がいい。
ウィローは、じっと僕達を見つめていた。三人とも、何も喋らなかった。
でも、いつまでも石像になって固まってる訳にもいかない。だから、ウィローが、多分かなり無理をして、言わなくてもいいムダな質問をしてくれて助かったよ。
[ウィロー]
足が痛い?
[マッシュ]
あ?ああ・・・痛いな。どこもかしこも痛すぎだよ。
何なんだ、コレ。お前ら、よくこんな所に住んでいられんな。おかしいだろ、コレは!
[ウィロー]
ヘブン・スクエアの人間は、滅多に外へは出ないもの。一週間に一回、当番がゴミを捨てにくるだけで、ここには誰も来ないわ。
[僕]
キレイに見せようと、こんなに色々やって、結局、誰も来ないなんて変じゃない?
マッシュ
こんな作り物、なんか気味悪いぜ。逆に汚い感じだし・・・。引っぺがしちまえよな。俺ならそうするぜ。
[ウィロー]
それはしないと思うわよ。
あなた達だって、ヘドロだらけの道でも、普通に暮らしてるじゃないの。
[マッシュ]
意味がよくわかんねえんだけど・・・そうなのかな。ただ受け入れるしかないってのは、もしかしたら似てんのかもな。
[僕]
そろそろ、行こう。夜が明けたらまずいんだ。
これから先は、いちいち驚くのも止めた方がいいよ。ビックリする事だらけなのは、もうちゃんと解ったんだからね。ムダな労力だもの。
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