ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

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[ウィロー] 私は、あなた達の世界にびっくり。あなた達は、私の世界にびっくりで、お互い様ね。  でも、それでいいんじゃない?退屈しないもの。普通じゃ、却って何だか損した気分。 [マッシュ]  お前ら、ちょっとばかし似てるな。ピント外れなコメントする所がさ。  俺は常識人として、ムダな労力使いながら、これからもびっくりし続けるつもりだぜ。損をしない様にな。 5・  僕達は細くて浅い、流れの早い川に行き当たった。ウネウネと長く道を横切っているけど、見渡す限りどこにも橋はない。なんでだろう・・・と考えるのは、もう止めたけど。  やけに美しい川だった。嫌になるくらい澄んだ透明の水が、月の明かりにキラキラと輝く。水底には、道と同じ白い石が敷き詰められ、サラサラと妙に規則正しいせせらぎの音。  だから、すぐわかった。この川も本物ではないんだ。 [ウィロー]  この水は循環式なの。 [マッシュ]  ポンプで流してるのか? [ウィロー]  この川は、ヘブン・スクエアをぐるりと囲んでて、細いドーナツみたいな形をしてるの。  電力でポンプを動かして、水を巡らせてるのよ。電気は自家発電で貴重なのに・・・家でも電灯じゃなくロウソクを灯してるってのに・・・なんで、わざわざこんな事に使うのか、意味わかんない。  途中に、ろ過装置もあるのよ。地下に埋め込んでるから目にはつかないけど。だから、水がいつもキレイなの。 [僕]  落ち葉が落ちる事もないしね。魚も虫もいない、消毒済の水? [ウィロ]ー  そういう事。 [僕]  ヘルズ・スクエアのミザリー・リバーとはえらい違いだよね。  あの川の水はミルクコーヒーみたいなもんさ。透明度ゼロ。 [マッシュ]  甘い甘い。ミルクコーヒーなんてもんじゃないだろ。  ありゃ、溶岩だぜ。どす黒い、茶色の溶岩。マグマがドロリドロリと流れて行く写真を、プロフェッサーが見せてくれた事があったけど、そっくりだもんな。 [僕]  それにあの臭い・。ひどいよね、本当に。ダイナマイト級だよ。嗅ぐ度に、頭が噴火する。 [マッシュ]  俺達、汚した憶えないのになあ。誰も、あそこで用を足したりはしないぜ。なんで、あんなになったんだろう? [僕]  オールド・ドウピーマザー(居眠りばあちゃん)から聞いたんだけどね。彼女が小さかった頃は、ミザリー・リバーで泳いだり、釣りが出来たんだって。そんな時代もあったんだね。いつ汚れたんだろう。
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