ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

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[ウィロー] 魔法がかかってるとか?妖精が住んでるとか?奇跡を起こすとか? [僕]  違うよ。そんなんじゃない。 [マッシュ]  一人でいられるんだ。ロックでは一人っきりになれる。みんなが認めた、そんな場所なんだ。 [ウィロー]  どういう事よ?説明してくれる? [僕]  いつもじゃないけどね。時々、どうしようもなく、一人になりたい時ってあるでしょ。  静かにじっと、自分と自分で向き合って。一人だけで、静かに物思いにふけりたい時があるよね。 [ウィロー]  そうかな・・・。  おじさんやおばさんがウルサイ時には「もう一人にして」て思った。  でも、それとはちょっと違う感じね。 [マッシュ]  お前は静かな生活をしてるからな。わかんないのかもしれないな。  だけど、ヘルズ・スクエアの人間なら、誰でも頷くさ。  俺もそういう時がある。  夕日が真っ赤に燃えてんのに、あの忌々しい霧が出てきてさ。ボワーッと空が滲んでく、そんな夕暮れ時に・・・。 [僕]  一人で考えたり、何かに想いをはせたり、夢を追ったり・・・自分自身と向き合いたい時、ヘルズ・スクエアの人間はロックに行く。ミザリー・リバーを渡ってね。橋は崩れてもうないし、水深も結構あるから、危険といえば危険だけど、それでも行くんだ。  そして、ここが肝心なんだけどね。誰かが〈ロック〉にいたら、絶対絶対、邪魔してはいけない。声を掛けたり、見ていてもいけない。  どんな小さい子だって心得ている。それが、ヘルズ・スクエアのルールで、ロックのルールなんだ。 [マッシュ]  うるさく尋ねたり、詮索するのも厳禁だ。ただ、そっとしとくんだ。 [ウィロー]  心配でも?どうしたの?とか、聞いちゃダメなのね。 [僕]  どれだけ心配でも。その事に触れちゃいけないんだ。 [ウィロー]  どうして? [マッシュ]  触れられたくないからさ。 [ウィロー]  あなた達もロックに行くの? [マッシュ]  そう何回もじゃないけどな。行くよ。少し泣く事もある。  で、しばらくすると元気になるんだ。そしたらまた、悲しみ団地に戻って行ける。 [ウィロー]  あなたも泣くの、エッグ? [僕]  僕も泣くよ。泣きたい時には泣かなくちゃ。  自分に正直になれる場所がロックなんだ。だからこそ、とっても大切な場所なんだよ。
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