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僕達は、月光の中、小さなせせらぎを渡った。底の小石はコンクリートで固められていて、足裏がひどく痛む。水が冷たいのには驚いた。薬臭かった。
そこで突然、草原や木々が目の前からすっぱり消えた。作り物なんだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど、川を渡って二十歩のところで、キッチリと。まるで線を引いたみたいに、キレイさっぱりなくなった。
そこから先は・・・。うーん。驚くなと自分で言っといてなんなんだけど、やっぱり驚いたよ。
信じられない事だけど、なんとも微妙な色合いのリノリウムが、隙間なく、その先の地面を覆っていたんだ。肌色と茶色の中間みたいな色。
リノリウムっていうのは、ホラ、よく学校の廊下や階段をカバーしてる、あれさ。ツルツルした、固いビニールみたいなやつ。
ヘルズ・スクエアの学校も、崩れる前はリノリウムが敷いてあった。
今の学校には、つまりルインズ(廃墟)だけど、そんな物はない。ドロンコの地面に直に座るのはナンだから、たいてい立ったまま授業を受ける。小さい子達だけは、貴重な石に座る。
でも、まあ、昔にリノリウムを見たことはあるんだ。だから、すぐにわかったんだけど、町の地面全体にリノリウムを敷き詰めるなんて、聞いた事もない。
歩いてみたら、正直、ヘルズ・スクエアのネチョネチョ道より、もっと気持ち悪かった。
ホープ島としては、湿気が少なめな夜だったけど、リノリウムはじっとりとしめって、ビショビショ、ヌルヌル。痛くはないけれど、その代り、裸足の足でピタピタ歩いていると、なんていうのか・・・ジワジワ変な気持ちになってくるんだ。
非現実感なのかな。まあ、自然じゃない感じだよ、やっぱり。
可哀想に、ウィローは足を滑らせてばかりいた。三回も転んだんだ。
ヘルズ・スクエアじゃ、ハッピー・ベビーやスノー・ホワイトだって、あんなに転ばないよ。ウィローのように大きい女の子がコケるなんてね。どれ程、歩きづらいか、それでわかるってなもんだよ。
[マッシュ]
言いたかねえけど、やっぱり言わしてもらうぜ。
こりゃ・・・一体、何なんだ?
説明してくれよな、ウィロー
[ウィロー]
ヘブン・スクエアの町に入ったのよ。家は全部で七軒。狭い町なの。
[マッシュ]
そんな事、聞いてんじゃねえよ。
地面はどこいっちまったんだよ?どの通りにもリノリウムを敷いてるのか?おかしいだろ、フツーに。
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