ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

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 おじいさんの家、まあ今はおじさんおばさんの家になってるわけだけど、庭のど真ん中を、あの川が横切ってるの。  おじさんが、よくブツクサ文句言ってるわ。じいさんが川やら池やら作るから、狭苦しいし寒々しいって。  暑い国なら、よかったんでしょうけどね。 [僕]  庭に池もあるんだね。川の水が流れ込んでるの? [ウィロー]  そう。  おじいさんの遺言で、庭の模様替えとかしたり、川や池を壊したりしちゃいけないの。庭に宝が隠してあるからなんでしょ。  嫌味な人よね。おじさん達が、頭に来るのも当たり前だわ。 [僕]  よくわかった。ありがとう、ウィロー。 [マッシュ]  もうわかったのか、エッグ? [僕]  まだだよ、マッシュ。  でもいいヒントにはなったよね。 [マッシュ]  お前には負けるよ。  さあ、行こう、ウィロー  庭で一時間・・・だったよな。この謎、解いてやろうぜ。 6・  思っていたのより、小さな家だった。オモチャの人形の家を思い起こさせる。  ウィローの家は、他の六軒に囲まれた、そのど真ん中に位置していた。どの家も、ヘブン・スクエア流デザインだ。  遠目にはステキに見えたよ。  美しい白板の壁。丸みを帯びた四角の窓。花柄のカーテンから漏れる、いかにも暖かさそうなオレンジ色の光。丸いアーチを描くドア。  庭は狭いけど、青々とした一面の芝生で、あちこちにチューリップやバラが咲いている。  でも。ここから先は、言わなくてもわかるよね。  全部、見せかけだけなんだ。ニセモノ。  近寄って、よくよく見ると初めて解る。  壁は、荒っぽくペンキを塗ったアルミ羽目板で、そこここが歪んで隙間だらけ。サビも浮いてた。  ウィローから聞いた時は絶句したけど、窓なんか存在してさえいなかったんだ。壁に描かれた絵だったんだから。  こうなると、ほとんどジョークだよね。  当然の事ながら、芝生も木も花も、プラスチックかゴム製だった。妙な臭いが、ほとんど動かない空気の中で淀んでた。  僕達は島に住んでるから、風は吹きまくるものだと思ってる。ヘブン・スクエアはヘルズ・スクエアよりずっと狭くて、家を密集して建ててるから、真ん中のウィローの家は風通しがひどく悪いんだ。  ヘブン・スクエアの人間は、頭がおかしいのか、それとも、無駄に努力家なのか、どうにも判断しかねる。
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