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滅多にない、暖かな晩になった。天候までが、いつもと違う特別な夜を演出してくれた様に。僕らはニセ白樺の木の根元に、三人揃って座っていた。雨が止み、雲が消え、空が晴れた。月光が美しく輝き、昼間の様に明るい。瞬きすら忘れた。
ホープ島では、今までこんな事、一度もなかった。
湿気もなく、霧もなく、月や星までもが、くっきりと見えるなんて。
満月か。そう思った。
まるで、秘宝が呼んでいるみたいだと、そう思った。
ダイヤモンドの輝きはどんなだろうか。僕はそれを見て、何を感じるだろう。そう考えたら、そこでフッと笑いが漏れた。
なぜか、その笑いは苦かった。
7・
「一時間、待つ」と言っても、僕達は誰も、時計を持っていなかった。
だから、僕はたびたび池の水面を見に立った。これは、と思った時にマッシュに声を掛ける。「マッシュ」と。それで十分。
マッシュはペンを持ってきて、ある場所を確認して印をつけ、僕に笑いかけては戻っていく。そしてまた座り、待つ。
[ウィロー]
さっきから、何やってんの?
まさかとは思うけど・・・。あなた達、謎を解いたんじゃないでしょうね?
[僕]
たぶん、わかったと思うよ。
[ウィロー]
そんなにあっさり、何よソレ。 マッシュもわかってるわけ?
[マッシュ]
最初はてんでチンプンカンプンだったけど、エッグがヒントをくれたからな。すぐピンときたよ。
[ウィロー]
そりゃ、よかったわね。私にはちっともピンとこないんですけど。
[僕]
驚かないでいいよ、ウィロー。大丈夫。とってもシンプルな話なんだ。
[ウィロー]
だったら、シンプルに説明してよ
[マッシュ]
お前さ「庭で一時間・・・」なんて、時間のこと聞くと、すぐに時計を思い浮かべるんじゃないか?チクタクいう、機械仕掛けのアレさ。
[ウィロー]
そうね。おじさんとおばさんも、そうだったみたい。
家中の時計を、バラバラに分解してたもの。万が一の事を考えてね。
でも、何も見つからなかった。
[僕]
さぞ、見物だったろうね。
[ウィロー]
傍で見ているかぎりはね。面白かったわ。
でも、笑っちゃ可哀想よ。
おじさん達は大真面目なんだから。髪振り乱して、必死なのよ。
[マッシュ]
お前達ヘブン・スクエアの人間にとっちゃ、時計と言えば、その時計しかない。
でも、ヘルズ・スクエアじゃ、訳が違う。だから、わかったのさ。
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