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[ウィロー]
どういう事?
[僕]
時を計る方法はたくさんあるって事だよ。
[マッシュ]
ヘルズ・スクエアの人間は、チクタクいう時計なんて、誰も持ってないからな。だから、別の方法を使う。
[僕]
いいかい、ウィロー。
時計にも色々あるんだ。
一定の時が過ぎる・・・その間に決まった変化を繰り返す物だったら、何だって時計にできるんだよ。
[マッシュ]
太陽の位置、月の高度、砂時計に日時計。それに・・・水時計もな。
[ウィロ]ー
まさか・・・。
[僕]
おいで、ウィロー。
もういい頃だよ。こっちに来て、見てごらん。自分の目で確かめてみるんだ。
僕は、ウィローを池の縁に連れて行った。マッシュは木に寄りかかったまま、一見ウトウトして見えたけど、実は周囲に油断なく目を配っていた。
こんな所を誰かに見られでもしたら、控え目に言ってもややこしい事になる。今は邪魔されたくない。だから、見張り役を務めてる。
本当に頼りになる。それがマッシュだ。
[ウィロ]ー
池の中には無いったら!
[僕]
この池はタイル張りだ。
僕達がここに着いた時、水はここ・・・ほら、ペンの印がついてるよね。水はここに来ていた。上から五段目のタイル。その中ほどかな。
座って待っている間に水はジワジワと上がってきて、四段目のタイルに接した。そしてすぐまた水位が下がっていき、五段目の下端までいったかと思ったら、また上がり始める。
つまり、この池の水面はいつも同じ高さではなく、上下してるんだ。五段目のタイルの下から上、上から下と行ったり来たり。ゆっくりと、でも規則正しくね。
庭の中にあって、まだ捜索されてなくて、一時間ごとに決まった変化を繰り返すもの。怪しいよね?
[ウィロー]
このタイルの下にあるっていうの? 五段目のタイルの、どれかの下に?
[僕]
自信があるわけじゃないよ。だから、やってみるしかないんだ。
間違ったっていいじゃない。何度だって、やり直しはできるんだから。
この段のタイルを、一つ一つ剥がしてみようよ。
[マッシュ]
セメントでくっつけてあるんだろ?
時間、かかりそうか?
あと数時間で日が昇るんじゃないかなあ。
[僕]
池は小さいんだし、そんなに枚数はないから大丈夫だと思うよ。八枚だけ剥がせばいいんだ。
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