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ダイヤ百個っていうと、ものすごいお宝に聞こえるけど、サイズがとっても小さかったから、あんまり感激しなかったなあ。
袋は片方の手の平にポンと載ってしまうし、しかも軽い。中を覗いても影が多くて、よく見えない。
なんかこう・・・拍子抜けした気分だった。
マッシュとウィローも、小首を傾げていた。あんなに大騒ぎしたのは、この為?こんな、ちょっとした物の為に?そんな感じだったよ。
僕らは顔を寄せ合って、もっと袋の中身をよく見ようとした。
けれど、当然ながら、そうやってくっけばくっつく程、見えにくくなる。
[マッシュ]
ここでじっくり観察するのは無理だ。まだ暗くて、何にも見えやしない。
それに、夜明けも近いはずだ。
朝の光の中、ここで三人、間抜け面で突っ立ってるなんて、どう考えたってヤバいだろ。
[僕]
落ち着いて隠れられる場所はないのかな。
ウィロー、どう思う?
[ウィロー]
ええ、あるわよ、エッグ。
最高の場所、ピッタリの場所が。
[マッシュ]
どこだよ?
[ウィロー]
ロックよ。
[マッシュ]
ロックだあ?
[僕]
よく考えてね、ウィロー。ロックは、ヘルズ・スクエアにあるんだよ。本当に行きたいの?
[ウィロー]
ええ、本気よ。
[マッシュ]
なんで?
[ウィロー]
うまく言えないけど、行くべきだと思うの。
ロックでなら、本当のあなた達が見える気がする。
それに・・・私、なんか少し泣きたい気もするから。
とにかく行ってみたいのよ。理由なんてどうでもいいでしょう?
[僕]
わかったよ、ウィロー。それ以上、もう何も言わなくていい。
[マッシュ]
質問はもう無しだな。
そうだよ、お前の言う通りだ。
俺達はロックに行くべきなんだ。
僕らはこうして、ヘルズ・スクエアへと戻っていった。作り物のイタイ町から、去っていく。もう二度と、ヘブン・スクエアに行くことはないと、僕にはわかっていた。
ヘルズ・スクエアの、腐ったヘドロ道に足を踏み入れた時、あの時ほどホッとしたことはない。
僕が暮らすのは、ヘルズ・スクエア。僕の全てがここにある。色々マズイ所はあるものの・・・僕はそこで生きていくことを望んでいる。
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