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どうして?君の物だよ。おじいさんが、君に遺したんだからね。
[ウィロー]
見つけたのは、あなたとマッシュよ。あなた達は、これを必要としてもいる。
持って行っていいのよ。半分こすれば?それが、一番よ。
[マッシュ]
断る。俺はいらない。
[ウィロー]
何でよ?貰う権利あるわ。これがあれば、色々な事が出来る。
[マッシュ]
そうか?何が出来るっていうんだ?
[ウィロー]
ヘルズ・スクエアをより良くできるわ。役に立つわよ、きっと。全てを変えられるの。もっとマシな生活が出来るのよ。
マッシュはロックにしゃがみ込んで、ウィローと目を合わせた。
そして、微笑んだ。とても優しく。まるでウィローのお兄ちゃんになったみたいに。いたわり深く彼女を見つめる。
「もう一度だけ言うぞ。これが最後だ。俺はいらない。欲しくない。必要もしない」
ウィローは、目を逸らした。
「どうしてなの、マッシュ。どうして?理由ぐらいちゃんと聞かせてよ」
マッシュはいきなり立ち上がり、クルリと彼女に背を向けた。
日差しに何かがきらりと光った。マッシュの涙だったのかもしれない。
「理由は、俺にもはっきりとは言えない。ただ・・・多分、変えたくないんだ。俺が生まれ育った町を。ヘルズ・スクエアをな。俺にとって大切な人達と、これからも暮らしていく。きっと素晴らしい生き方が出来る。ああ、きっと出来る。幸せになれる。変えたくないんだ。ダイヤ百個の力でなんて、絶対に変えたくない」
ウィローは、泣きそうな顔でマッシュを見、続いて僕を見た。
彼女が何を言おうとしているかわかった。
真剣に答えるべきだと思ったよ。ウィローの為だけではなく、僕自身の為に。
僕は立ち上がり、マッシュと並んで立った。
マッシュはこっちを見なかった。二人で海を見続けた。どこまでも広大な海を。
太陽の光が眩しかった。ダイヤの光とは全く違う、暖かで激しい光なんだ。
背後から、ウィローの声が聞こえてきた。
すぐには応えなかった。僕には解り始めていた。ウィローに対して答えるのではないって。僕が真実、心からの答えを告げたいのは、マッシュに対してなんだ。
[ウィロー]
エッグは?エッグは貰ってくれるの?
[僕]
僕は・・・ホープ島を出ていく。ヘルズ・スクエアを去る。
いや、今すぐにじゃないよ。今じゃない。
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