ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

51/52
前へ
/52ページ
次へ
ロックでは、彼女も好きなだけ泣いていい。時にはそれも必要なんだ。  海も空も太陽も輝いている。何もかも美しくみえた。  僕は、ただただ一つの思いを繰り返す。  ああ、マッシュ。大好きなマッシュ。  君は、解ってくれるだろうか。受け入れてくれるだろうか。怒らないかい?泣かないよね。許してくれるだろうか。僕がいつか出ていく事を。君と別れて。  マッシュ・・・。僕はそうしなきゃいけないんだ。どうしても。どうか解って・・・。  口には出せなかった。声にならなかった。  でも、マッシュには聞こえたんだ。  彼は僕を見て、優しく静かに笑った。  僕は決して忘れない。全てを理解して受け止めてくれた、あの暖かい微笑を。僕は一生、忘れる事はないだろう。    背後で、ウィローが立ち上がった気配に、僕達は振り返った。  ウィローは、ダイヤを拾い集めて、元の皮袋に戻していた。僕とマッシュを見て、少し恥ずかしそうに笑った。目の縁が赤く腫れていたけれど、さっぱりした顔だった。 [ウィロー]  あなた達は二人とも、ダイヤはいらない。そういうわけよね。  ところが、実は、私もいらないの。 [僕]  どうして? [ウィロー]  欲しくないのよ。 [マッシュ]  なんで? [ウィロー]  多分、呆れられるでしょうけど・・・。  私は、まだ、子供だからよ。  ダイヤ百個をどう使ったらいいかなんて、そんな事わからない。考えられない。  自分の為に使う?人の為?地球の為とか?  そんな重い事、決めたり責任取ったりなんか出来ない。  私は、もう少し、普通の子供でいたいの。バカみたいだと思う? [マッシュ]  思わねえよ。それでいいのさ。 [僕]  その気持ち、よく解るよ、ウィロー。  僕もそれでいいと思う。 [マッシュ]  それで?そこの、それ。ダイヤはどうするんだ? [ウィロー]  おじさんとおばさんに、あげちゃおうかな。 [僕]  それがいいんじゃない。 [マッシュ]  お前にイジワルしたヤツにあげるのか? [ウィロー]  ダイヤ欲しさでオカシクなってただけだものね。本当はまずまずで、悪くはない人達なのよ。 [僕]  なんか変な気分だよ。  最初にダイヤの事を聞いた時は、すごい事が起こる気がした。  でも、今は違うんだ。  ダイヤ百個っていっても、たいした事じゃないんだね。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加