0人が本棚に入れています
本棚に追加
[マッシュ]
宝探しは面白かったぜ。ワクワクした。見つけちまったらもう、つまんないもんな。
ヘブン・スクエアを見れたのも、よかった。色々、大事な事がわかった気がする。
[ウィロー]
私は帰るわ。元の場所へね。
[僕]
ヘブン・スクエアへ?
[ウィロー]
ええ、そう。好きでも好きじゃなくても、私はそこの住人なの。
私は、本当にまだ子供。だから、オウチに帰るのよ。
[マッシュ]
送っていくよ。
僕達は別れた。
出会った場所と同じヘル・マーケットで。
今後、もう二度と会う事はないだろう。そうお互いに解っていた。
さっぱりした別れだったな。泣いたりとか、そんな事は誰もしない。
ウィローはヘブン・スクエアで暮らし、僕達はヘルズ・スクエアで暮らす。どっちが良い悪いじゃない。それが自然で当たり前だと思っていたし、素直に受け止められたんだ。
「さようなら」
そう言い会って手を振り、そしてお終い。
9・
あの日から三年後、十五歳の時、僕は島を出た。
一人で。無一文。ゼロからのスタートだった。最初は本土で暮らし、仕事を選ばず働いて、その後、別の国に移った。
今は働きながら学校にも通い、それはそれは忙しい。驚いた事に、ヘルズ・スクエアのルインズで、プロフェッサーに習った授業が、けっこう役に立っている。
とはいえ、時には気が滅入る。学校のお金やアパートの家賃は、支払いを催促されてばかりだし、そっちを払うと食べ物を買うお金が足りなくなる。なんだかいつも空腹で、へたばってしまう事も多い。
なにより淋しいな。家族が傍にいるのといないのとでは、本当に違うよ。ホープ島では、ヘルズ・スクエア全体が、僕の家族だったのに、ここではそうじゃない。一人で泣く事も随分と増えた。
でも、いいんだ。自棄になったりはしない。自分で選んだ道だ。僕は満足している。
今までも、これからも、ありのままの現実を受け入れて生きていくよ。
そして・・・。いつも、どんな時も、常に変わらず影の様に僕に寄り添い、支えてくれる、ある人への思いが、僕に力を与えている。
普段はそんな事はしないけど、今日だけは、ちゃんと声に出して言おう。
「かけがえの無い友、マッシュへ。
僕はいつも君を想っている。また会う日まで、僕を見守っていてくれ。君に恥じない生き方をするから。大好きだよ。
エッグ」
パートⅡに続く
最初のコメントを投稿しよう!