ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

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ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話

1・ もしも、君がダイヤ百個を掘り出したら、どうする?  最初から、難しい質問だよね?自分の物にしちゃう?他の人の為に使う?それとも僕達の様に、ただ「いらない」と言って、そのまま立ち去るかな?  本当に、僕らはそうしたんだよ。 どうしてそんなもったいない事をしたのか、そう聞かれそうだね。頭がおかしいんじゃないって、思われそう。  後悔してないかって?時にはそういう事もあるけれど、度々じゃない。後悔しないように生きていく、あの日、そう誓ったから。約束を守れるように、頑張っている。  僕が君達に話したいのは、そんな物語なんだ。  昔・・・と言っても、わずか五年前だけど、僕はまだ十二歳だった。  その頃、暮らしていたのはホープ島。ある大きな国の一部だったんだけど、あまりにもチッポケな島だったせいか、本土とは全く交流がなかった。  島の住人のほとんどは、一生、島から出ない。島民以外の人間と会う事もない。  ちょっと信じられないくらい、ジメジメした所だったな。ホープ島の気候はね、ものすごい暑いとか寒いとか無くて、季節の変化もまるで無し。  ただもう、一年中、なんだかうすら寒くて、曇りか雨か霧ばっかり。  その雨もねえ。見えるか見えないかの細かい霧雨が、シトシトシトシト、降ったり止んだり。いっそ、ザアザア、ドドド―ッて、バケツをひっくり返した様に降ってくれれば、キレイな雨水が溜められたのにさ。そんな訳で、年がら年中、水不足に苦しめられた。  まあ一言でいうと、いつもボヤーンと霞んでる、そんな島なんだ。本土の人達が、ホープ島に関心が無かったのも、よく見えなかったかららしい。  島が、二つの地区からなっている。  ヘルズ・スクエア(地獄地区)とヘブン・スクエア(天国地区)。僕が生まれ育ったのは、ヘルズ・スクエアだ。暗やみ団地のエッグ(卵)。そう呼ばれてた。  僕と親友のマッシュ(おかゆ)は、ある日、ひょんな事から、ヘブン・スクエアに住む少女と出会った。名前はウィロー(柳)。ヘブン・スクエアの人と会ったのは初めてだから、とてもビックリしたよ。  ウィローの方だって、ヘルズ・スクエアの人間を見たのは初めて。だから、僕達の事を色々と知りたがり、聞きたがった。  あの特別な夜、僕とマッシュ、そしてウィローは、ミザリー・リバーの真ん中に浮かぶロック(岩)にいた。
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