0人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
ヘルズスクエアの子供達~パートⅠエッグのお話
1・
もしも、君がダイヤ百個を掘り出したら、どうする?
最初から、難しい質問だよね?自分の物にしちゃう?他の人の為に使う?それとも僕達の様に、ただ「いらない」と言って、そのまま立ち去るかな?
本当に、僕らはそうしたんだよ。
どうしてそんなもったいない事をしたのか、そう聞かれそうだね。頭がおかしいんじゃないって、思われそう。
後悔してないかって?時にはそういう事もあるけれど、度々じゃない。後悔しないように生きていく、あの日、そう誓ったから。約束を守れるように、頑張っている。
僕が君達に話したいのは、そんな物語なんだ。
昔・・・と言っても、わずか五年前だけど、僕はまだ十二歳だった。
その頃、暮らしていたのはホープ島。ある大きな国の一部だったんだけど、あまりにもチッポケな島だったせいか、本土とは全く交流がなかった。
島の住人のほとんどは、一生、島から出ない。島民以外の人間と会う事もない。
ちょっと信じられないくらい、ジメジメした所だったな。ホープ島の気候はね、ものすごい暑いとか寒いとか無くて、季節の変化もまるで無し。
ただもう、一年中、なんだかうすら寒くて、曇りか雨か霧ばっかり。
その雨もねえ。見えるか見えないかの細かい霧雨が、シトシトシトシト、降ったり止んだり。いっそ、ザアザア、ドドド―ッて、バケツをひっくり返した様に降ってくれれば、キレイな雨水が溜められたのにさ。そんな訳で、年がら年中、水不足に苦しめられた。
まあ一言でいうと、いつもボヤーンと霞んでる、そんな島なんだ。本土の人達が、ホープ島に関心が無かったのも、よく見えなかったかららしい。
島が、二つの地区からなっている。
ヘルズ・スクエア(地獄地区)とヘブン・スクエア(天国地区)。僕が生まれ育ったのは、ヘルズ・スクエアだ。暗やみ団地のエッグ(卵)。そう呼ばれてた。
僕と親友のマッシュ(おかゆ)は、ある日、ひょんな事から、ヘブン・スクエアに住む少女と出会った。名前はウィロー(柳)。ヘブン・スクエアの人と会ったのは初めてだから、とてもビックリしたよ。
ウィローの方だって、ヘルズ・スクエアの人間を見たのは初めて。だから、僕達の事を色々と知りたがり、聞きたがった。
あの特別な夜、僕とマッシュ、そしてウィローは、ミザリー・リバーの真ん中に浮かぶロック(岩)にいた。
最初のコメントを投稿しよう!