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私は、壁に頭を打ち付けて歯ぎしりした。
クールを装っていても、分かる。あいつは内心、デレデレしている。
……しかしなあ。
夢香のほうも、嬉しそうなのだ。
夢香が惚れているのなら、そっとしておいてやってもいいのかもしれない。
いやいや、男子高校生なんて、みな野獣。
このあとは、カラオケ、もしくは漫画喫茶、やめて涼くん、よいではないか、否、よくないぞ、断固反対!
私が奥歯を噛みしめているうちに、ふたりは歩みを進める。
もう出口だ。
ドアの前に、花や雑貨を扱った売店があった。
「あ、おみやげ見ていきたいな」
夢香が足を止めて言う。
「お父さんに何か買っていこうっと!」
……ん?
私は耳を疑った。娘よ、今なんて言った?
涼が答える。
「ああ、誕生日なんだっけ」
そうだ。すっかり忘れていた。今日は私の誕生日だった!
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