父、娘を尾行する

9/9
前へ
/12ページ
次へ
「何にしようかなあ。薔薇の花もいいなあ……」 「それ、夢香が欲しい奴じゃん」 「えへ、ばれた?」 「まあ、いいんじゃない」 「黄色い薔薇にしようかな。ビタミンカラー! 元気になれそう」 夢香はレジに並び、黄色の花束を購入した。 「お父さん、喜んでくれるといいね」 「うん。ねえ、帰りにケーキ屋さん寄ってもいい?」 「ああハイハイ。ケーキ屋さんね」 私はそっと目じりをぬぐった。 やはり彼氏より父親か、うむ。 夢香はまだまだ、そうなんだろう。 私はとても寛大な気持ちになって、ふたりの背中を見送った。 少し時間を置いてから、駐車場の車に戻る。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加