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父、娘を尾行する
日曜はさわやかな秋晴れだった。
私は、駅構内の案内マップを眺めるふりで、南口に立っていた。
目深に野球帽をかぶり、おまけに普段はかけない眼鏡をかけている。
これで変装はバッチリだろう。
腕時計をちらりと見ると、十時を五分ほどまわっている。
夢香が小走りにやってきた。
待ち合わせ場所としては定番の、犬のモニュメントの前で足を止める。
「ごめんね、涼くん。待った?」
「ああ、うん。待った」
男がそっけなく返事して夢香と並んだ。
いやそこは「全然待ってないよ」もしくは「僕も今来たところだよ」などと答えるところだろうが。
私は目をすがめつつ、涼という男を観察した。
夢香と同じ、高校生なのだろう。
まだほんの子供のようにも見える。
中性的というのか、テレビの中で踊っている男性アイドルのようなルックスだ。
くせ毛なのか、そういうふうにセットしているのか、フワフワと柔らかそうな髪をしている。
身長は百七十前後というところか。
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